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ユミルはどこに? [ユミル]

ユミルはどこにいるのだろう。
天と地との間の混沌とした闇で眠っている。そこは氷に閉ざされ、容易には溶けない暗闇の時空である。
そろそろ、目覚めるときがきた。
この世は、ユミルの目にはどう映るだろうか。機械を操ることは得意だが、人の心は簡単に壊してしまう人間どもは、オーディンの末裔である。
もしも、ユミルがこの世を創造していたら、人間はどんな姿で生まれてきただろうか。
邪悪か聖者か、悲しみか憎しみか恨みか羨望か。
聖者の世界にも邪悪はあり、誰もが平和と優しさと幸福を願いながら、叶わないのが宇宙の真理。
この書を読むおまえが聖者ならば、この世を滅ぼすがいい。おまえば邪悪の存在なら、この世を謳歌すればよい。

聖なる宇宙樹との出会い<3> [ユミル]

大きな樹木の芽が5つ、まん丸い口をあけて、滴をこぼしながら泣いています。驚いて目をパチパチさせていると、
さわさわさわ、さわさわさわ・・・・・、とろとろとろ、とろとろとろん。
再び風が吹いてきました。
リオンは両手を広げて樹木に寄りかかり、抱き締めるみたいにして体をゆだねました。
樹木は子守唄のように、さわさわと木の葉の音楽を奏で続け、風はリオンの体を包んでいきました。
リオンの目から涙がぽろり、ぽろり。
 
「ユミルがあなたを選んだのです」 

ふたたび優しい声がしました。見上げると、あたたかな瞳がリオンを見つめています。
樹木はその唇でリオンの頬にそっと口づけると、枝々をまるで聖母のように腕を優しく差し伸べ、リオンを抱き上げました。
エレベータに乗ったみたいにふわーっと上昇していき、気がつくと、リオンは抱き抱えられたまま地面から遥か上にいました。
地上では、幾本もの道がうねうねと伸び、道の左右にはさっき見た不思議な形をした家々や店が並んでいます。
街の左右に湖があり、大きな樹木を中心にして、美しい森の街が広がっていました。
それはただの街ではありませんでした。
地球そのものの姿だったのです。

聖なる宇宙樹との出会い<2> [ユミル]

緑の匂い、樹皮の匂い、苔の匂い、土の匂い・・・・・・。
柔らかな風は可愛い家々が並ぶ街全体に吹いています。
風はとろんとろんと、ぬるま湯のような感触で肌を撫で、リオンの頭からつま先までを包み込んでいきました。
ふっと、リオンは立ち止まりました。
風の肌触りがあまりにも気持ちよく、まるで風でできた卵のなかにすっぽりと入ってしまったかのように感じたのです。目を閉じて、とろとろの風に浸っていたくなりました。
 
「こちらにおいでなさい」
 
どこかからか、女の人の声が聴こえてきました。
そっと目を開けて、声のしたほうを振り向くと、大きな大きな樹木が立っていました。それはリオンが今まで見たことのないくらいの大きな樹木でした。
いつか母と一緒に会いに行った屋久島の縄文杉よりも遥かに大きく、「大きい」という言葉で表せないくらいの巨大な樹木です。てっぺんはもちろん見えません。一体、何人で手をつなげば周囲を囲めるのでしょう? リオンには想像もつきません。
リオンは導かれるように、樹木の立っている場所まで歩いて行きました。
樹木の下に立つとひんやりとします。樹冠の影が清らかな涼しい風を作り出しているようです。
幹には濃い緑色の苔が絨毯のように生えていて、触るとしっとり、ふわふわしています。
苔の間からは小さな芽がいくつも出ていました。この巨大な樹木の赤ちゃんなのでしょう。すると、
「あーん、あーん」
小さな芽たちがリオンの姿を見て、びっくりして泣き始めました。
「妖精?」
リオンは芽が口を開けて泣くところなんて、初めて見ました。

聖なる宇宙樹との出会い<1> [ユミル]

やっとのことで追いついたリオンはドアをノックしました。
トントン、トントン。
「トゲトゲさーん、開けて!さっきは何て言ったの?」
返事はありません。
トゲトゲが飛び込んだ窓のほうに行って、ノックをしてみましたが返事はなく、誰もいないようです。窓からは赤いソファが置いてあるのが見えました。その奥の部屋は台所のようでした。もう一度、ノックしてみましたが返事はありません。
「あのトゲトゲは確実にこの家に入って行ったわ。あの子のうちなのかしら」
周りを見渡すと、ここにもリオンの背よりずいぶん低い建物がいくつも並んでいました。
「ミニチュアの街が造られた公園なんて、東京にあったかしら」とリオンは思いましたが、その家々があんまり可愛いので、少し散歩してみることにしました。まるで童話の挿絵みたいな不思議な形をした屋根やきれいな色が塗られた小さなおうちがいっぱい並んでいました。
「素敵なおうち!どんな人が住んでいるのかしら?」リオンは楽しくなってきました。
桃色の三角屋根の家、テラコッタの土塀に囲まれたドーム型の家。
木の洞(うろ)が玄関になっている、ケヤキの木そのものが家になっているおうち。
竹細工のように、竹で編まれた竹筒型の家までありました。
「一体、ここはどこかしら?私はどこに迷い込んできてしまったのかしら」
リオンは不思議でなりませんでしたが、思ったほど不安はありませんでした。そこにはさっきから心地いい風が吹いていたからです。そして、あの小さな窓からはトゲトゲがちょっぴり顔を出して覗いていたのですが、リオンは気づきませんでした。

トゲトゲの丸い動物 [ユミル]

「わあ、素敵!」
思わず口に出したとき、突然、リオンの前にトゲトゲの丸いものが飛び出して来ました。
「キャッ」
リオンが持っていたバッグを跳ね飛ばすと、トゲトゲはドールハウスの壁にぶつかって、すべり落ちました。そして、ぶるぶる震えながら、赤茶色の壁にへばりついてリオンをじっと見つめました。リオンも見つめ返しました。
「何かしら? ハリネズミに似ているけれど、ちょっと違うみたい。リュックを背負ってるし・・・・・・。リュック!? 動物がどうして?」
リオンがもっとよく見ようと顔を近づけると、トゲトゲが何かを呟きました。
トゲの間から口が開いて、「*ёル」と喋ったのです! 
「え、何?」と聞き返そうとしたとたん、トゲトゲは手と足をきゅっと引っ込めて、栗のイガみたいなまんまるのトゲの塊になり、くるくるくるくる回り始めました。
「あっ待って!」という間もなく、トゲトゲは坂道を転がり下り、猛スピードで逃げていきます。
「なんて言ったの、教えて!」リオンも思わず駆け出し、
「これじゃ、不思議の国のアリスみたいだわ、うさぎじゃなくて栗のトゲみたいだけど!?」
心のなかで呟きながらトゲトゲを追いかけました。
「待ってよぉ」
リオンは息を切らして追いつこうとしましたが、くるんくるん、ひゅーっ、坂道を下りきると、トゲトゲは一軒の家の開いていた窓のなかにすぽんっと入ってしまいました。


ユミル唯一の人間の友だち [ユミル]

リオンが初めてユミルに出会ったのは4~5年前のことです。
田舎から東京に出て来て、何度目かの引越しを終えて近所を散歩していた時のこと。
リオンは大きな樹木と触れ合うのが大好きです。だから、このたびの引越しも第一条件は広い公園か植物園がそばにある家でした。
ポプラやプラタナス、ケヤキやイチョウが並ぶ小道が近くになる家が見つかって、休日になると散歩に出かけました。大きな樹木がたくさん並ぶ通りはリオンのお気に入りの場所になりました。
ある日のことです。
いつものプラタナス並木を歩いていると、今まで見たことがないくらいの大きな樹木が並んでいるところに出ました。
プラタナスの葉っぱは長さが50センチくらいありました。しばらく歩くとイチョウの巨木が並ぶ通りに出ました。
大イチョウ独特の乳柱がいくつも垂れ下がっています。山の中でもこれほどの巨木が群生しているのはなかなか見られないのに、街の中にどうして並んでいるのか不思議に思いましたが、こんなチャンスはめったにありません。
「もっと大きな樹木、もっと大きな樹木!」と目指して歩いて行きました。
そのうちに土の小道に出ました。東京には珍しくアスファルトではない道の左右に巨木が立ち並んでいました。
リオンはどこかの公園に着いたのだと思いました。
「こんな大きな樹木がある公園が近くにあるなんて!」と嬉しくなって、どんどん小道を進んで行くと、ドールハウスが並ぶ場所に辿り着きました。そこには、リオンの背の3分の1くらいの小さな家がいっぱい建っていました。

天空の山 [森の神秘]

東京のど真ん中に天空の山はある。
その山の近くに、ユミルの森の谷の街につながるトンネルがあるのだ。
ユミルに会いに行きたいと思ったら、まずは山を見つけなくてはならない。
トンネルを見つける方法は誰も知らない。今のところは。

この世のものでないこの世の植物 <2>逆さ竜の樹 [植物園]

「この<逆さ竜の樹>はね、非金属を金に変える力を持っているんだよ」
逆さ竜の樹の根元近くにいる竜がニヤニヤ笑って、ユミルに言いました。
「おまえの持ち物を一つだけ、金に変えてやるよ、何がいい?」
「え、ボク? 金って言われても・・・・・・」ユミルはその日は手ぶらでした。
「じゃあ、おまえ。めがねを金に変えたらどうかね。目がもっと見えるようになるかもしれないよ」
逆さ竜の樹はめがね虫ノーリに話しかけました。
「ボクのめがねを金に?」
「そうだよ、かっこいいぜ! おまえ、きっと女の子にモテるようになるよ。ヒャッヒャッヒャッ」
逆さ竜の樹はニヤニヤ笑いながら言いました。めがね虫ノーリはしばらく黙っていましたが、そっとめがねをはずしました。
「やめなよ、ノーリ!」ユミルは思わず止めました。すると、めがね虫ノーリは悲しそうに笑って、
「僕は人に好かれるようになりたいんだよ。友達がたくさんいる君みたいにね」
ノーリは逆さ竜の樹の根元にめがねを置きました。
そこに生えていた逆さ竜の樹たちはいっせいに口を大きく開け、「ふうぅー!」とめがねに向かって息を吐きかけました。めがねがキラキラッと青白く光ったと思うと、めがね虫ノーリのめがねは金に変わりました。

この世のものでないこの世の植物 <1> [植物園]

お昼ごはんを食べたあと、ユミルはめがね虫ノーリを誘って、フランセ博士の植物園に行きました。植物園には今まで見たことのないような花がいっぱい咲いているのです。植物園をつくったフランセ博士は人間界からやって来たという噂がありますが、本当のところはわかりません。ユミルが生まれたときにはフランセ博士はユミルの森にいて、立派な植物園の館主として働いていたからです。植物園の建物はガラスで出来ていて、美しい彫刻が施してあります。林檎の女神や白樺の女神、蝶々やミツバチの精霊たち、そして、ユミル族のご先祖さま、ユミル神の姿が彫られてありました。
 
ユミルとめがね虫ノーリがチャイムを鳴らすと、白衣姿のフランセ博士が出てきました。
「やあ、よく来たね。今日は面白い植物を見せてあげよう」
二人はミモザが咲きほこる眩しいほどの黄色のトンネルをくぐって植物園の中に入って行きました。トンネルの突き当たりからは扇形の道が続き、四方八方にさまざまな植物園の扉がありました。今日、フランセ博士が連れて行ってくれたのは「ミステリープランツの園」です。そこには“この世のものでないこの世の植物”が育っていました。ユミルはずっと行きたいと思っていて、1年以上前からフランセ博士にお願いをしていましたが、今日やっと見せてくれることになったのです。
 
フランセ博士が扉を開くと、鮮やかな色の花々が目に飛び込んできました。
「わあっ!」
ユミルとめがね虫ノーリは早くいろんな植物を見に行こうと、思わず駆け出しそうになりましたが、フランセ博士に止められました。
「だめだめ、ここには怖い植物もたくさんいるから、私と一緒にいないといけないよ。それに人と会うことに慣れていないから、静かに静かに歩くようにしてくれよ。今日は一つだけ、じっくり観察するとしよう」
二人は素直にフランセ博士の指示に従って、彼のあとをついて歩くことにしました。根っこから羽根が5枚生えている植物、真っ赤なトゲを持つスミレ、サボテンみたいな木に苺が実っているストロベリーツリー等々、本当に今まで見たことのない珍しい植物がたくさんあります。
「ほら、これをなめてごらん」
フランセ博士がミントに似た葉っぱを一枚ちぎってくれました。おそるおそる口に入れると、
「しょっぱーい!」
ユミルとめがね虫ノーリは舌をベーッと出しながら顔を見合わせました。
「これは塩ミントといって、昔はね、海が遠い国では塩の代わりにされたんだよ」
しばらく歩いてから、フランセ博士が立ち止まったのは<逆さ竜の樹>の前でした。ユミルやめがね虫ノーリよりも背の小さい樹木がいっぱい生えていました。逆さ竜の樹は根元のところが竜の顔が二つくっついたみたいになっている植物です。しかも頭のほうが地面から生え、アゴのほうは上を向き、竜のヒゲが草のようにボウボウ生えた逆さまの状態になっていました。


『聖なる樹の予言書』 [ご神託]

<ユミルの森の宇宙樹>には突如、図書館の時空が現れることがある。樹木はあらゆる書物で覆われ、幹も樹冠も見えなくなるほどだ。本好きにはたまらない時間となり、ユミルの森の谷の街からは情報を求める人々が集まり始める。秀逸なのは、世界各地の宇宙樹神話を描いた書物を集めた時空である。中でも、『聖なる樹の予言書』と題された書物には、読む者の未来を予言する言葉が綴られている。ユミル族の者たちはご先祖様の巻き物と呼んで親しみ、その神託に人生をゆだねる。しかし、図書館の時空はそう長くはとどまってくれない。
  
今日浮かび上がったのはこんな言葉・・・・・・。
 
「愚か者は微笑みかけてくれる者を友達と思いこむ」
Ósnotr maðr,
hyggr sér alla vera viðhlæiendr vini. 

  
聖なる樹が告げる言葉は予言であり、箴言(しんげん)であり、警告である。 



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